仙台高等裁判所 昭和25年(う)722号 判決
しかし、二人以上の被告人に対する事件を併合審理して弁論を分離することなく終結した場合の判決言渡期日にその被告人全員のうちの一人または数人が不出頭の場合には、裁判所は、それが公判期日に被告人の出頭を要する事件の場合でも、既に弁論終結後のことであるから、弁論を再開もしくは分離するの要はなく、出頭した被告人に対する関係において判決を宣告し、不出頭の被告人に対する関係においては判決言渡期日を延期し、その延期した期日に被告人の出頭を待つて更に当該被告人に対する関係において判決の言渡をなせば足りると解すべく、従つて、この場合最初に告知した判決言渡期日までに判決原本が作成されてある場合でも、未だ作成されてない場合でも、出頭した被告人に対しその被告人の関係部分のみについてそれが可能な場合には主文及び理由を朗読するか又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げれば足り不出頭の被告人に対する延期した言渡期日においてもこれと同様の手続をなせばよいのである。従つて、このような場合に一通の判決原本に基いて別箇の言渡期日に出頭した被告人に各別に判決の言渡をすることも特にこれを禁じている法規もないから許されるものと解せられる。
記録によると、本件につき原審は被告人両名を併合審理しその第六回公判期日において同時に弁論を終結して昭和二十五年六月十日午前十時に判決を宣告する旨を告げ次いで右言渡期日を職権で同年七月二十四日に変更したところ、同日は被告人吉田芳英のみ出頭し被告人新野嘉蔵不出頭のため原審裁判官は出頭した吉田に対する関係で判決の宣告をすると告げ判決主文を朗読し同時に理由の要旨を告げており、更に被告人新野嘉蔵に対する関係においては同年八月八日の判決言渡期日において出頭した同被告人に対し判決主文を朗読し理由の要旨を告げて判決の宣告をしているのであるから、たとえ、その判決原本は両被告人に対し昭和二十五年七月二十四日附のものが一通作成されておるだけに止まるけれども、前段において説明したとおり、これを以て訴訟手続に判決に影響ある法令の違背があるとは做し得ない。所論はこれと全く相反する見解に立つものであつて、採用できない。